*1: 845~860MHz/928~940MHz
802.11ah推進協議会
技術TGリーダ 鷹取 泰司
802.11ahはサブ1GHz(1GHz以下の周波数帯)で動作する無線LANであるため、日本においては免許不要の周波数帯である920MHz帯での運用が期待され、本協議会でも制度化に向けた取り組みを進めています。 ただし、920MHz帯はすでに多数の無線規格が存在しており、利用可能な周波数などの制限が課される課題があります。
本稿では、920MHz帯に加えて802.11ahの運用が期待される新たな周波数帯「デジタルMCAシステム跡地(845~860MHz, 928~940MHz、以下「MCA跡地」と表記します)」について解説します。
デジタルMCAシステムは第二世代携帯電話の方式で構成され、タクシー無線等に利用されている無線システムです。周波数は850-860MHzを下り通信に(845-850MHzはガードバンド)、930-940MHzを上り通信に利用しています。
ただし、機器調達を含む設備の維持管理が困難な状況になってきている等の課題があり、高度化MCAの制度化が検討され、平成31年4月に制度整備が完了しました[1][2]。高度化MCAの利用周波数は、上り通信は895-900MHz、下り通信は940-945MHzが用いられます。
今後はLTE技術を用いた高度MCAシステムに段階的に移行されていくことが想定されています。
2019年12月に総務省から「デジタルMCAシステムの高度MCAシステム(平成31年4月に制度整備)への段階的な移行を想定し、デジタルMCAシステムの移行後に導入する新たな無線システムの技術的条件等に関する検討」に関する調査がアナウンスされました[3]。対象周波数はガードバンドも含めて845~860MHz と既存の920MHz帯を含めた928~940MHzの2つの周波数帯とされました。この調査結果は2020年3月に総務省から報告されています[4]。
報告では845~860MHz 帯、928~940MHz 帯の双方に、候補システムとして802.11ahが記載されており、新たな周波数帯での802.11ah利用の具体的な検討が進められる予定となっています。
なお、845~860MHz 帯については、802.11ahの他、「3次元屋内外測位システム」、「LPWA システムの双方向化」が候補システムとなっています。また、928~940MHz 帯については、802.11ahの他、「LPWA システムの双方向化」、「パッシブ型 RFID の利用拡大」、「IEEE 802.15.4x方式によるIoT無線通信システム」、「無人航空機等の位置情報共有システム」が候補システムとなっています。
MCA跡地は既存システムがない新規に開放される周波数帯と位置付けられるため、推進協議会としては以下の3つの観点で802.11ahの展開にとって大変重要な周波数帯と考えられます。
MCA跡地の状況と、この周波数帯での802.11ahの利用について説明しました。802.11ahのポテンシャルを十分に発揮し、様々な産業や家庭など幅広く多様なニーズに応えていくためにも、920MHz帯の早期の制度化とともに、新たな周波数帯であるMCA跡地での利用が一日も早く実現されることが期待されます。
参考文献
[1] 「MCAシステムの周波数移行について」
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ref/portal/abstract.pdf
[2] 電波法施行規則等の一部を改正する省令案(平成31年2月8日 諮問第1号)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000599929.pdf
[3] 総務省報道資料「900MHz帯を使用する新たな無線利用に係る調査」, 2019年12月
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000411.html
[4] 総務省報道資料「900MHz帯を使用する新たな無線利用に係る調査の結果と今後の予定」, 2020年4月
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000428.html