〜相模湾における沿岸漁業の効率化に向けた映像配信試験を実施〜
IEEE802.11ahによる相模湾における沿岸漁業の課題解決に向けて、神奈川県水産技術センター相模湾試験場(以下、相模湾試験場と記載します)、東京海洋大学、802.11ah推進協議会による、実験試験局免許を用いたIEEE802.11ahの映像配信試験が、6月22日から6月26日にかけて行われました。
漁網を海底に設置し、内部に滞留させた魚群を引き上げる定置網漁は、相模湾を初め、日本全国で行われている歴史ある漁業です。
しかし定置網漁は「どのような魚が、どの程度の量、漁網に滞留しているか、引き上げてみないとわからない」という課題を抱えており、定置網漁の効率化に向けて、IEEE802.11ahを用いた課題解決に挑戦しています。
〜バイパスや建物を挟む、2.2km先まで定置網の映像を送信〜
今回の送信試験では、まず、沖合1.7km付近に設置されている定置網の映像が、西湘バイパスを挟んだ相模湾試験場に、どの程度の品質で到達できるのか確認するための試験を行いました。定置網付近に停泊した、相模湾試験場の保有する調査船「ほうじょう」より、ROV(Remotely Operated Vehicle: 遠隔操作型の無人潜水機)で事前に撮影した映像をストリーミング配信。
船舶から1.7km先にある灯台を中継し、更に西湘バイパスを越えて、500m先の相模湾試験場での映像到達を確認しました。
1MHzの帯域幅によるIEEE802.11ahを用いた伝送では、魚の量が把握できる1FPSでのSD品質の映像の配信に成功し、また同期間で実施した4MHz帯域幅による伝送では、同じく1FPSでのHD品質の映像の配信を実現しました。この実験により、IEEE802.11ahであれば、相模湾試験場にいながら、定置網に滞留している魚を目視で、大きな時間のずれなく把握することができることが確認できました。
〜海上1.7km先でFHD品質動画の受信に成功〜
また今回の映像送信試験では、上記の試験に加えて、定置網から灯台までの海上1.7kmを用いて、見通しのある海上におけるIEEE802.11ahによって、どの程度の映像が配信できるのか試験を行いました。
1MHzの帯域幅によるIEEE802.11ahを用いた伝送では、魚の動きなどが把握できる6FPSでのHD品質の映像の配信に成功し、また合わせて実施した4MHz帯域幅による伝送では、なめらかな魚の動きが確認できる12FPSでのFHD品質の映像の配信ができることを確認しました。
802.11ah推進協議会は、本映像配信試験結果を踏まえ、神奈川県水産技術センター相模湾試験場、東京海洋大学と共に、IEEE802.11ahによる沿岸漁業の課題解決に向けて、実証実験を視野に検討を通じ、現段階では国内で利用できない同規格の利用実現向けた活動を推進してまいります。
【参考】 神奈川県水産技術センター相模湾試験場によるリリース
「長距離Wi-Fi(802.11ah)で定置網にかかった魚をいち早くキャッチ!」を掲載しました