2021年12月10日、「802.11ah推進協議会」(以下11ah協議会)の第4回総会が開かれました。第4回総会は、新型コロナウイルスの影響で、第3回総会に続きオンラインでの開催となりました。
総会に先立ち、小林会長からは、AHPCの歩みと参加いただいている会員団体への感謝を踏まえ、1年後には実運用できる形で対応機器が世の中に出回るようになるという制度改正の見通しについてお伝えさせていただきました。また新型コロナによりテレワークやオンライン会議など、Wi-Fiの位置づけは高まる一方で、普及の進まないIoTに対し、802.11ahの登場によりIoTやデジタルトランスフォーメーションが進むという展望をお示しするとともに、今後課題となる対応アクセスポイントや端末の普及に向けて、引き続き802.11ah推進協議会は活動していくことをご説明させていただきました。
本総会では、ご来賓として参加いただきました、総務省 移動通信課 課長補佐の加藤 智之様より、「最近の自営系無線システムの動向」と題したご講演をいただきました。加藤課長補佐からは、920MHz帯小電力無線システムの広帯域化の検討状況、今後のスケジュールに加え、デジタルMCA跡地の検討状況、アナログ簡易無線局の周波数帯拡張、小電力データ通信システムの新たな利用形態にかかわる技術基準の整備、1.9GHz帯デジタルコードレス電話の高度化について、ご紹介いただきました。
北條運営委員からはオンラインで、11ah推進協議会の活動報告として、会員数の状況や2021年の活動についてご報告させていただきました。また今後の見通しとして、920MHz帯での802.11ahの利用については、2021年度内に答申が完了し、2022年夏には制度化が期待されることをお示しすると共に、さらにデジタルMCA跡地の利用に向けた活動を一層進めていくという活動方針をお示ししました。
続いて鷹取副会長より技術TG活動についてご報告させていただきました。技術TGによる制度化に向けた活動として、これまで進めてきた同一周波数帯の他システムとの共存に向けた取り組みに加えて、2021年度は周辺の周波数を用いる他システムとの共存について、検討が進んでいる旨をご報告し、近々パブリックコメントの募集が始まる見通しをお伝えいたしました。また2022年の国内利用開始に向けて、1MHz幅で6チャンネル、2MHz幅で2チャンネル、4MHz幅で1チャンネルが利用可能となる見通しと共に、10%Duty下でありながも、802.11ahであれば動画伝送や、6台程度の複数台が同時送信が可能であることが確認できていること、Wi-Fi Alliance®にてWi-Fi HaLow™相互接続プログラムが開始されたことを、ご説明させていただきました。更に、より広い周波数帯であるデジタルMCA跡地では、より制限の少ない802.11ahが期待できることにより、ユースケースの拡大が期待できることをお伝えし、制度化が進む中、次年度は実際のビジネスが広がる重要な年となることを踏まえ、会員団体の皆様に対してご協力をお願いさせていただきました。
藤井運営委員からは、802.11ahの活用事例を中心としたマーケティング活動について報告させていただきました。2021年度の802.11ah推進協議会のマーケティング活動としてイベントや実証実験が行われた旨を報告させていただくと共に、具体的な事例として、802.11ahを用いた水門監視や河川の水位監視、工場内における生産性向上の取り組みをご紹介させていただきました。各事例においては、現場の抱える課題と802.11ahにより新たに実現できる価値をご説明すると共に、水門監視の事例ではバッテリー駆動が期待できること、河川水位の事例では802.11ahで十分な映像が送れること、工場の事例では従来のWi-Fiと比べて広いエリアを効率的にカバーできることをご紹介し、更に11ah対応機器の準備状況を交えつつ、802.11ahの展開に向けて、会員団体の皆様へ活動への参画をお願いさせていただきました。
また、本総会では特別講演として、Newracom社のVP of Marketing & SalesであるFrank Lin様よりプレゼンテーションをいただきました。Frank様からは802.11ahの特徴に加え、その特徴を踏まえたデモンストレーションとして、802.11nと802.11ahを用いた、フロアをまたがるリアルタイム通信の模様と、802.11ahが非常に優れた省電力性を持つことを示すデータをご紹介いただきました。更に、様々なパートナーと進める多数のプロダクトの紹介を通じ、Newracom社が複数の市場で今後ビジネスを展開されることをご説明いただきました。
本総会では、新たな試みとして、協議会での活動に加えて、運営委員によるパネルディスカッションを実施いたしました。従来のLPWAを採用した機器が市場に登場する中で、802.11ahがどのように社会に貢献するのかをテーマに、司会の江副運営委員の下、鷹取副会長、小中運営委員、酒井運営委員、藤井運営委員がそれぞれの意見やアイディアをお伝えさせていただきました。鷹取副会長からは802.11ahの海外動向として、Wi-Fi Alliance®のWi-Fi HaLow™認証プログラムを通じて今後多くの端末が登場するという予測と共に、日本が世界をリードできる可能性についてご紹介しました。またチップセットの動向やオープンな規格に対する意見として、小中運営委員より、海外でのチップセットを採用しているカメラなどの端末が登場していることや、オープンな規格による現状の資産が活用できるメリットが紹介されました。酒井運営委員からはマーケティング面での特徴として、802.11ahはIPベースである点からお客様から高い期待を寄せていただいており、新しいユースケースが期待できることをお伝えさせていただきました。また、藤井運営委員からは、802.11ahのコスト面として、従来のWi-Fi機器と大きく変わらない価格感への期待を伝えていただくと共に、フルノシステムズ社における2.4GHz、920MHzのデュアルバンドに対応した802.11ahゲートウェイの試作機が紹介されました。
総会の終わりには、鷹取副会長より改めて802.11ahの国内利用開始が間近であることをお伝えし、普及拡大に向けて多くの方々と共に、802.11ahの市場を立ち上げて参りたい旨をお話しし、無事第4回総会を終了しました。