ZETA Alliance主催「第17回 ZETA Alliance DAY」参加報告2025

802.11ah推進協議会
広報・普及TG 林 果保利


2025年3月27日に横浜市内にて「第17回 ZETA Alliance DAY」が開催されました。 本セミナーは業務の効率化・DX化やインフラの状態監視などの社会ニーズが増加する中で、今後も様々な用途での活用が期待されているLPWAに注目し、LoRaWAN/Wi-Fi HaLow/ZETAのLPWAのトップランナーから特徴や最新動向、取り組みなどについて紹介し、LPWAの今後を展望する機会にしていただくことを目的に開催され、11ahの特徴と導入事例を紹介する講演を行ってきましたので報告します。

「第17回 ZETA Alliance DAY」
開催日時:2025年3月27日 14:00~17:30
開催場所:イノテックビル 2階 セミナールーム

■ 開会挨拶

ZETAアライアンス 代表理事 諸井 眞太郎 様
本セミナーの開催に先だって、諸井様より開会の挨拶がありました。
業界を跨ぐ共創、多様なプレイヤーの連携が新たな可能性を生み出している今、リーダーシップによってビジネスパートナーがそれぞれ相応の対価を得られるスキームを構築する経済価値創出と、同じ目的意識を醸成する社会的価値創出を両立させ、継続していくことが社会を変えるインパクトに繋がるものであると述べられました。各LPWAのトップランナーが集まる今日をきっかけに行動に繋げることで、LPWAで様々な社会的インパクトを与えられるようなセミナーとなることを期待していると述べられました。

■ 「YRP研究開発推進協会のWireless Sensor Network(WSN)に関する取組み、慶應大学と連携した地域DXに関する取組み」

講演者:一般社団法人 YRP研究開発推進協会 上席研究員 柘植 晃 様
講演内容:
誰でも自由に使えるLPWA6方式の通信実験が可能な環境を2018年から提供されており、この環境を利用し会員企業、関連団体と連携した様々なIoT実証について、スマートシティを構築するために慶応大学の「地域 IoTと情報力研究コンソーシアム」と連携した国プロ等の関連プロジェクト活動について紹介されました。

LPWAを利用したドローンによる海上遭難者、山岳遭難者の捜索を想定した通信実験や複数のLPWAとマルチホップ機能を活用したマンホール下の水位データと周辺のカメラ画像送信実験を各地で実施され、また、画像解析技術を利用したリアルタイムにごみ収集量を計測するプロジェクトでは藤澤市、横須賀市、鎌倉市へ展開しゴミゼロプロジェクトの推進に取り組まれている。
今後は横須賀YRPに構築した6G/IOWN時代を見据えた地域DX推進基盤を中心に、画像を含むワイヤレスセンサーネットワーク環境をマルチプロトコルで構築し、地域社会のIoT化に貢献できる取り組みを推進していきたいと述べられました。

■ 「802.11ahの概要と社会実装に向けた実証ユースケースの紹介~法令改正後11ahの市場実装に向けたPoCの優良ケースを紹介~」

講演者:802.11ah推進協議会広報普及タスクグループ/株式会社メガチップス 林 果保利
講演内容:
他LPWA技術の中では最新のIoT向け無線LAN規格であるIEEE802.11ah/Wi-Fi HaLowの導入を加速するため、その特徴とユースケースを紹介しました。

規格の特徴

・ Wi-Fi HaLowは、従来のWi-FiやLPWAと比較して、以下の点で優れています。
・ 長距離伝送: 1kmを超える伝搬性能
・ 高速通信: 既存LPWAより高速な通信性能
・ 低消費電力: 乾電池による長期間駆動
・ 低コスト: アンライセンスバンド

導入事例

Wi-Fi HaLowの活用事例として、工場・物流DX、地域のスマート化、労働環境のスマート化、日常生活を豊かにする4つの視点でユースケースを紹介。
・ 工場内における見回り効率化や工場内CO2排出量の見える化 定量的効果:AP台数を2.4GHz Wi-Fiの1/5 に削減可能であることを確認
・ スマート街路灯の制御とカメラや音声による防犯監視への応用
・ 商業ビル/公共施設の地下エリアなどのモバイル不感地帯での駐車場空き状況や重電設備管理
・ 他LPWAと比較し精細な画像による河川氾濫箇所の遠隔監視
定量的効果:他LPWAの約12倍の画素数の映像送信、20倍の送信間隔での画像転送が可能であることを確認。
PoC事例として紹介したユースケース以外にも様々な場所でWi-Fi HaLowが活用され、本格的なIoT社会を支える未来を目指して市場普及活動を行っている。また、複数の動態デモ展示とHaLow対応機器の静態展示を行う施設「νLab(ニューラボ)」も、最新製品の追加が行われるなど随時リニューアルを行っているため、Wi-Fi HaLowの最新状況を体感できる施設として是非見学に来て頂きたいと紹介した。

*AHPC講演資料のダウンロードはこちら(PDF資料へのリンク)

■ 「LoRaWANの市場動向と最新仕様アップデートについてのご紹介」

講演者:セムテックジャパン合同会社 技術担当課長 高根 澤貴之 様
講演内容:
LoRa Chip製品を提供するSemtech社の視点からLoRaWANの市場動向、最新仕様のアップデート、LoRa Satelliteについて紹介されました。

LoRaWAN概要

LoRa変調方式を採用し、低消費電力・長距離通信・低コストでセンサ等のデータ送信を実現する無線通信規格。EndDevice(子機)とGateway(中継機)でWANを組む取り決めがLoRaWANでLoRa AllianceがEndDevcie~Gateway間の通信方式を決めている。

市場動向

電気、ガス、水道のスマートメーターやインフラ管理・スマートライティングをはじめ、スマートホーム・ビルマネジメント、水位、温度、湿度のスマート農業、物流における温度管理・パレット管理、健康管理などの幅広い分野で活用されている。 ​

衛星通信

地上ネットワークと衛星通信を組み合わせることで、より効率的なデータ送信を実現するLoRa技術を利用した衛星通信ソリューションを紹介。

また、LoRaチップ製品の進化や新製品の特徴に触れながら、LoRaWANリレーや1チャンネルハブの活用例、衛星通信の利点と課題についても紹介され、セムテックの技術革新と市場拡大の取り組みが強調されています。 ​

■ 「LoRaWANを活用した採用事例のご紹介とシステムソリューションのご提案」

講演者:RichardsonRFPD Japan株式会社 本部長 市ノ澤 修一 様
講演内容:
LoRaWAN技術の採用事例と関連するシステムソリューションを紹介されました。

Richardson RFPDの役割

RF、IoT、電力アプリケーション向けの専門製品と技術サポートを提供する。

採用事例

スマートシティの実装を含む、さまざまな業界でのデジタルトランスフォーメーションが強調されています。効率的なエネルギー管理、交通管理、公共サービスなどのスマートシティ、他の産業用途として、農業、物流、ヘルスケアなどが挙げられ、IoTデバイスとの相互運用性が鍵となることと説明されました。

■ 「世界最大のLoRaWANコミュニティ The Things Networkとコミュニティ版LoRaWANサーバ The Things Stack SandBoxの利用事例」

講演者:エルスピーナヴェインズ株式会社 代表取締役 青谷 浩二 様
講演内容:
スマートシティ、農業、工場、物流など幅広い用途で活用されているLoRaWANのオープンプラットフォームである​The Things Network(TTN)とLoRaWANの主な活用事例について紹介されました。

活用事例

・ 熱中症対策: 温湿度センサでキャンパスのリアルタイム監視。 ​
・ 地下水監視: 水位センサで遠隔監視しコスト削減。 ​
・ 盛り土変状監視: 振動・傾斜センサで定量的評価 ​
・ 水道設備監視: 小型設備の遠隔監視で業務効率化 ​
・ スマートゴミ箱: 距離センサやAIカメラを活用したモニタリング
その他、鳥獣害対策や設備振動検知などにも応用されており、無償でLoRaWANネットワークサーバを構築可能なThe Things StackもありLoRaWANは設置が簡単で、誰でも始められる技術であると述べられました。

■ 「ZETA最新動向2025:LPWA技術の最前線と未来展望」

講演者:ZETAアライアンス 理事/株式会社テクサー 代表取締役 朱 強、ZiFiSense CEO Dr.Zhuoqun Li様
講演内容:
Wi-SUNアライアンスのもとで相互運用性を確保するための強固な認証プログラムと世界標準のプロトコルであるWi-SUN導入事例を紹介されました。


物流分野

・ 環境に優しくコスト効率が高い再利用可能な輸送包装(RTP)だが、在庫管理や紛失防止の課題をWAN、LAN、PANベースのIoT技術を活用し、リアルタイム位置情報や資産管理を効率化することで解決を図る。 ​

電力システム

・ 通信需要:
- 中電圧配電や低圧配電での通信ニーズに対応。 ​
- DL-IoT技術を活用し、低消費電力で高性能な通信を実現。 ​
・ 事例:
- 中国河北省や新疆での太陽光発電や配電管理プロジェクトで成果を上げている。 ​

LPWAの未来展望 ​

・ 物流DX:LPWA通信技術を利用したIoTとAIを活用しリアルタイム管理や予知保全を実現。 ​
・ 社会インフラ: エネルギー供給システムの効率化や持続可能なエネルギー管理を支援する社会インフラの構成要素としての役割を狙う。
ZETAをはじめとしたLPWA技術は、物流やエネルギー分野のDX化を推進し、社会インフラの最適化に貢献する重要な役割を果たしていくことを期待すると述べられた。

■ 「DX で社会課題解決に挑む - 進む、LPWA ZETAの社会実装 –」

講演者:ZETAアライアンス 代表理事/TOPPANデジタル株式会社 諸井 眞太郎 様
講演内容:
IoTでの社会課題の解決を目標に、ZETAの概要とそれを活用したソリューションと社会実装の具体的事例を紹介されました。

規格の特徴

・ ZETAは、以下の特徴を持つツリー型構造の無線通信規格です。
・ 長距離伝送: 中継器を利用することで、見通しの良い環境で10km、中継器3つで40kmの範囲をカバー可能 (マルチホップ)。
・ 耐干渉性: 2kHzの狭帯域利用により電波干渉に強い。
・ 低消費電力: 双方向通信 (アップリンク/ダウンリンク) が可能。

TOPPAN社によるZETA活用ソリューション

・ 河川水位監視システム (スイミール): ZETA通信によるセンシング情報とLTEカメラ等の情報を統合し、自治体の水害対策を支援。
・ 工場環境データ可視化 (e-Platch): 中継器を活用し工場内の広範囲な環境データを収集し、スマートファクトリー化を促進。

導入事例

・ 岡山県浅口市
スマートシティ実現に向け、河川・ため池水位計測、獣害対策、熱中症監視等にZETAを活用。
・ TOPPAN社自社工場
300台以上のセンサで温湿度等を監視し、環境点検や設備点検にかかる人的作業時間とコストを削減。

■ バッテリーレス液体検知センサのご紹介

講演者:藤倉コンポジット株式会社 技術開発部 高橋 昌樹 様
講演内容:
未来を支える技術としてバッテリーレス液体検知センサを紹介されました。

電気タイプや光学タイプのようなこれまでの液体検知センサは検知に外部電源が必要だったが、マグネシウム空気電池の発電原理を応用して液体を検知し、外部電源不要で無線通知が可能な液体検知センサを開発。このセンサはインフラ設備等の浸水、水位監視、潮位変化モニタリングなどに利用され、災害防止やインフラ保全に役立つ技術である。
さらにセンサ素子の発電力によるZETagモジュールの駆動にも成功し、今後はインフラ設備を中心とした防災・予兆保全などの分野を中心に製品化検討を加速する。また、印刷製法やテープタイプセンサの開発により、低コスト・大量生産を実現し、エコロジカルでメンテナンスフリーなセンサの普及を目指している。

■ 「第17回 ZETA Alliance DAY」に参加して

本セミナーを通じて、LPWA技術に興味・関心をもつ方々にも802.11ahの技術や他LPWA技術との違い、その活用可能性についての理解を深めていただく貴重な機会となりました。さらに、どの無線技術にも存在する苦手な点を他無線システムで補うようなマルチプロトコルでのソリューション提案も市場普及には重要となっていくことを実感しました。今後も、Wi-Fi HaLowの社会実装へと繋がる活動を続けてまいります。

*AHPC講演資料のダウンロードはこちら(PDF資料へのリンク)